甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの分泌が減少して全身の代謝が低下する病気です。もっとも有名な疾患が「橋本病」で、別名慢性甲状腺炎ともいいます。その名の通り、日本人の名前がついている珍しい疾患で、1911年に橋本策博士によって慢性甲状腺炎を発表されたことによります。その原因は自己免疫の異常とされていますが、自己免疫の異常がどのようなきっかけで起こるのか、いまだに明らかになっていません。自己免疫異常による炎症により甲状腺がはれたり、甲状腺機能異常を起こすことがあります。
◎疫学
橋本病は甲状腺の病気のなかでもとくに女性の割合が多く、男女比は約1対20~30程度と言われています。年齢別では20歳代後半以降、とくに30~40歳代が多く、幼児や学童はまれです。最近では不妊の原因として甲状腺機能低下症が関係している、ともされています。
◎症状
甲状腺機能低下症では以下のような症状が出ます。
下記のうち気になる症状がある方は、一度当院でご相談ください。
- 疲れやすさ、だるさがある
- 首が腫れてきた
- 食欲がないのに太ってきた
- 朝起きた時に、顔や手がむくむ
- 体重が増えてきた
- 便秘をしやすくなった
- 昼間も眠く、居眠りをするようになった
- 脈がゆっくり静かになった
- 体が冷え、寒がりになった
- 月経が不順になった
- 肌が乾燥し、カサカサになった
- 体が重く、だるく感じるようになった
- 気力がなくなった
- 髪の毛が抜けやすくなった
- 声がかすれやすくなった
- 物忘れしやすくなった
- 動作が緩慢になった
- 健診でコレステロールが高いと言われた
- 妊娠しにくい(不妊)
◎治療
甲状腺機能低下症に対しては原則として甲状腺ホルモン剤の補充療法を行います。最初は少量ずつ服用し、徐々に増やしてその人の体に合った量を調べます。体調がよくなったからといって服用を中止してしまう人がいますが、体に足りない分を薬で補充してバランスがとれているわけですから、毎日決められた量を必ず服用して下さい。橋本病でも、甲状腺機能が正常な人は治療の必要はありません。しかし、将来甲状腺ホルモンが低下する可能性があるので、3~6ヶ月に1度ずつ検査を受けたほうがよいでしょう。